突然ですが、クラウドファンディングを始めます:その理由と動機、目指すもの

突然ですが、クラウドファンディングを始めます

拝啓、不肖林凌(@HR67579657)、このたびクラウドファンディングを始めることといたしました。

といっても、ページの正式公開は6末~7初旬予定です。ですので、以下の内容もすべてongoingのものとなります。その旨ご了承の上、お読みください。

クラウドファンディングでは何をするのか?

 「若手研究者のキャリアラダーとしての非常勤講師ポストの不透明性」についての実態調査と、それに伴うグッズ配布活動を実施するための、クラウドファンディングを行います。具体的内容は以下のとおりです。

 第一に、本問題を周知し、広く社会に訴えるためのグッズ配布活動を行いたいと考えています。つまり、一般的な購入型クラウドファンディングと同様に、一定の金額をお支払いした方を対象に、Tシャツやステッカーといったグッズを配布いたします。

 Tシャツ・ステッカーのデザインについては下記を参照いただければと思いますが、一見「おふざけ」に感じられる部分があるかもしれません。しかしこれは単なる「おふざけ」ではなく、私たち若手研究者が置かれている苦境をユーモアで笑い飛ばすと同時に、アカデミックと関係する方々以外にもこの活動を知ってもらうことを目的としています。草の根、裸一貫、なんの組織的後ろ盾もない、吹けば飛ぶような活動である以上、人々にポジティブに認知してもらえる活動であることが、まず何よりも重要であると考えています。またこの見地より、これらのグッズについては、単に配布するだけでなく、実際に学会や研究会で着用していくことを通じて、「問題の周知」をアカデミック全体に広げていくことも目的としています。

 第二に、こうした問題がどの程度深刻なものなのかを、上記した論点に沿った形で把握可能とすべく、若手研究者(博士課程院生含む)を対象とした実態調査を行います。実態調査の内容については、原則としてWeb上での質問紙調査を行い、性別・年代・大学・学問分野といった分析軸ごとの基礎的集計をもとに、報告書の作成を実施する予定です。本調査については、調査設計の段階から、関心がある研究者の方々にはぜひとも広く参画していただき、かつ分析結果だけでなく調査データについても、一般公開することができればと考えております。また、ストレッチゴールの達成度合いによっては、調査対象の拡充(若手研究者だけでなく大学側も調査対象とする)や、多分野の若手研究者を対象とした質的調査の実施、学会・研究会などでの本問題に関するワークショップの実施なども行えればと考えています。

なぜクラウドファンディングという手法をとったのか?

 今回クラウドファンディングに挑戦する理由となったのは、同僚との会話からでした。一体非常勤講師のポストはどうやったら獲得できるのだろう。いくら査読誌に論文を出したって、教育歴がないのでは就職もままならない。このまま座して非常勤講師ポストが来るのを待つしかないのだろうか。こうした鬱屈した会話の中から、一つの異議申し立ての形態として、この問題を訴えるTシャツを作って配布したらどうかというアイディアが出たのです。ですが、仲間内でTシャツを作るだけでは、単なるお遊びに過ぎません。私たちが持つ問題意識を踏まえ、むしろこのことを世に問うことも重要ではないか。そう考え、今回若手研究者を対象とした実態調査と、グッズ配布を通じたアウトリーチ活動を行うべく、クラウドファンディングに挑戦することといたしました。

 今回クラウドファンディングが無事成功した暁には、研究費は以下の用途に充当します。まず、ファンディングにご参加いただいた方に配布するグッズ作成費用です。具体的には、Tシャツ・ステッカーの作成を行います。また、今回実施する「人文・社会科学系若手研究者の非常勤講師ポストに関する実態調査」にかかる諸費用に、グッズ作成費を差し引いた本ファンディングの費用をすべて充当します。ファンディングの結果頂いた額に応じて、後者の実態調査については、質・量とも拡充を行う予定です。

 この問題については、今まで若手研究者内で囁かれこそすれ、大学・学問領野間の格差の大きさもあり、ほとんどその実態については明らかになってはきませんでした。本ファンディングでは、まずこの実態を明らかにし、かつこの問題を周知することを目的とします。現実的には、本問題には様々な要因が絡み合っているため、短期的な解決は困難であると思われますが、まず問題を「知ってもらうこと」。そのことが、第一であると考えます。

想定される(批判的)問答

Q 私の周りでは非常勤ポストの配分はうまく行っていて、実際私もうまい形で先生から譲ってもらえた。だから、クラウドファンディングなんかをして、自分がさも大学院生の一般であるかのように主張するのはやめてほしい

A まず、そうした多種多様な状況を可視化すること自体が、重要であると考えています。確かに、今私が置かれている状況は「特殊」であり、その問題は大学院一般というよりも私が所属している組織ないしは自己の能力に責任帰属されるべきたぐいのものかもしれません。しかしながら、現状において私たちはそういう判断を可能な材料を持ち得ていないわけです。これがたとえば「調査対象のうち、○割は非常勤ポストを得ていて、そのうち社会学系の人は○割で~」というデータが有れば、私たちは自らがどの程度恵まれていないのかがわかるわけです。その意味において、本活動の趣旨が「恵まれない院生による異議申し立て」(のみ)ではなく、「そもそも今院生が置かれている状況の可視化」にあることは、繰り返し主張しておきたいと思います。言い換えるのならば、「恵まれていようが恵まれていなかろうが」、いろんな方に本活動や、調査に参加してもらうことが重要であると考えています*1

Q この活動の最終目標がわからない。結局制度を変えたいのかどうなのか?

A 本活動の目標は、先述したとおり「異議申し立てを通じた課題提起」と、「実態調査を通じたエビデンスの提供」の2つです。一方で、本活動については、現状継続的実施(実態調査の年次的継続)や、組織化を検討しておらず、あくまでも勝手連的な活動にとどめたいと考えています。これは、そもそも現状林の個人的活動である以上、広がりを持ちようがないためであり、さらにいうのならば、特定の誰かを敵に回すような活動は、この問題の構造を鑑みると行いたくないためです。よって、「制度を変える」端緒となる切っ掛けを作り出すことを望んでいますが、その後については、別様のやり方が必要ではないか、少なくとも本活動の射程外ではないかと考えています。

Q. 調査設計が不透明である。そもそも全国の大学院生を対象とした調査など可能なのか?

A. 後述するように、まだ予算がどの程度確保できるかがわからない状況のため、明確な調査設計については触れられておりません。この点については、ファンディングが成功した段階で、改めてご連絡します。後者については、現状当たりをつけ始めている段階ですが、最悪Web上での非抽出調査であっても、本調査には一定の価値があるとと考えています。というのも、繰り返しますが私たちはその程度のデータすら今有していないからです。

Q. 調査・分析に参加する人を募るっていってるけど、どうやって参加すればいいの?そもそも何をやるの?

A. 私に何らかの手段で連絡ください。調査が本格化したら連絡します。調査・分析については、質問表レベルで関わっていただくことも、データの二次分析をやっていただくのでも構いません。少しでも関心があるのならばご連絡ください(もちろんファンディング成功時で結構です)。

Q. クラウドファンディングで獲得した資金執行の透明性はどう担保するのか?

A. そもそもグッズ作成費とみかじめ代で6-7割行くので、調査費がどの程度確保できるのかが不透明な状況です。調査内容をファンディング額次第で動的に変える予定なのは、そのためです。原則、得た資金はすべてグッズ作成と調査費につぎ込む予定です。

Q. はやくグッズの具体的内容・デザインあげろよ

A. 関係各所と調整中です。ファンディング抜きにしても買いたくなるものにできればと思い努力しています。

Q. 業績にもならないことやるんじゃなくて「研究」しろよ。そんなんじゃ生き残れないよ?

A. こういう議論が出てほしくないことを祈るばかりですが、昨今の情勢を鑑みると出かねない(それも同業者から)と思うので一応書いておきます。局所最適を図って自分が生き残ろうとするのは大事なことですが、それだけではアカデミックギルドを維持することはできません。そもそも今の大学(企業・官公庁もそうだと思いますが)の問題の多くが、そうした局所最適を図り続けた結果ではないでしょうか?ネオリベラル的な自由主義的振る舞いも結構ですが(なんてったってあれは不遇な状況を乗り越えた人間に「能力」という神話を提供するわけですから)、もうそんなこと言って余裕ぶっこいている場合じゃないでしょうと思ってます。だってそうやって競争に勝ち抜いたところで、その勝ち抜いた猿山自体がいつなくなるかわからないんですから。まずは猿山の維持が大事じゃないでしょうか。これは私の、本ページにおける唯一の政治的意見です!

 

*1:例えば研究であれば、学振や研究助成金の採択率は公表されており、多くの分野にて「どの程度」業績を残せばどの程度のポジションに居るのかは、肌感覚で概ね理解可能な状況であるかと思います。一方、非常勤ポストはそうした状況にありませんし、共有も不足気味です。